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  • 2011.04.10 Sunday
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オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 最終話 55



オリジナル小説。「からくり人形は星を描く」



    *

青年はその後の世界について問われた時、こう答えるだろう。
どうでもよい、っと。
青年にとっては興味の関心ではなく、あくまで大切なのは生活だった。
自分を満たすだけの世界。
だから、この世界の前後など無意味なのだ。
---大切なのは・・・・


「にゃらら〜ん。おはようにゃん、はかるぅ〜。」
「おはよう、は違う気がするんだけど・・・。久しぶり、空羽。」
「にゃん?ん、そうだっけにゃ〜ぁ。昨日ぶり!」
「・・・・一年ぶり、だよ。」
「にゃはは〜。気にするんじゃにゃいにゃん〜。」


常に今である。
能ある鷹は爪を隠す。ただし、青年が隠したのは右目であった。


    
      *



二人の少年はその後の世界について問われた時、こう答えるだろう。
かわりないっと。
少年たちにとっては、この世界はいつでも変わらぬ場所である。
暖かい場所。
だから、少年たちは笑うのだ。
---しかし、少年たちはいつの日か・・・


「お帰りなさい!いきなり消えるから心配してたんだよ!」
「帰ってきたの?きゃははっ、また馬から落ちたのか〜?」
「少しだけ高くなったな、火影、陰火。」
「「少し、じゃないっ」」



現実を知らなければならない時が来る。
鹿を指して馬となす。
指差した手をつたい腕へと伸びた、どこまでも不完全な双子。




    *     


女はその後の世界について問われた時、こう答えるだろう。
進んでいるっと。
女にとっては世界は進んでいる、刻一刻と生まれ変わっている。
新しいものへと自分も周りも変わっている。
だから、この世界は常に興味深いのだ。
---それでも尚、歩みを進めるのは・・・



「おぉ。斗、元気そうでよろしいのな。」
「時雨こそ、相変わらずで安心したよ。」
「相変わらず、か。ん、そうだな。相変わらず、私は暁大好きだ。」
「・・・・はぁ。」



古いものも新しいものも守り抜く為だ。
狐が下手の射る矢を恐る。
狐だって彼女の手にかかれれば混乱せざるえないのであろう。




     *



少女はその後の世界について問われた時、こう答えるだろう。
変わっている。
少女にとって、世界は面白く自分のものではなくてはならないのだ。
自分が愛す世界。
だから、少女は決断した。
----そして、少女は・・・


「きゃわ−ん!斗ちゃ−ん!!お帰り−ぃ。/・・・待ってたぜ。」
「ただいま、烈火。・・・ん?」
「ん?ん?なぁ−に?包み隠さず−ぅ。/・・・言ってごらん?」
「・・・髪、切ったのか。」
「ご名答だ−よぉ。」


決断したのだ。変わることを。
猫をかぶる。それまで耳を閉ざしていた世界にようやく少女は向き合った。



    *



男はその後の世界について問われた時、こう答えるだろ。
何もないっと。
裏切りをした自身にとっては、何もない。罪以外の何も。
それは空っぽな世界だった。
だから、男はまた笑うのだ。
---本当の・・・


「りゃっほいっ!はかるん、はかるんじゃないか!っておい、俺様暁様が最後かよ!」
「・・・だって、一番気が重い・・・ね。」
「うぉい!その濁しは優しさでできてるんだよね?OKっさぁ!・・・でもさ。」
「・・・なんだよ。」
「もう来ないかと思った。・・・だから!ぱーぁっと大騒ぎしってやんよ!あっそぼう!」


世界を、自分を笑わせるために。
蛇の生殺し。それでも男は足の枷を振りほどき歩き出す。


   *



少年はその後の世界について問われた時、なんと答えるだろう。
馬に乗った、あの少年は・・・。







  




 



オリジナル小説 『からくり人形は星を描く』 残骸

 


−残骸。−

 


-054&裏35-電話のやりとり-

 

僕は推測はせず、さっさと携帯の電話帳を開く。
迷うことなく名前を発見し、即座に呼び出しボタンを押す。
電話とは不思議なもので特有の緊張感があるとメール派の僕はいつも思ってしまう。

相手は3コールぐらいででた。
出合った時とまったく同じ口調だった。
僕は現在の状況を説明した後、気になって仕方なかった質問をしてみた。
電話先の人物はあの子に会いたくないのかと。
空羽の仕事のときに見た少女にして彼の片目となったあの子に。
その答えは肯定にも否定とも取れないようだった。
僕は彼女の発言に感想じみたことしか返せなかった。


「・・・話し方が似てる。家族だからかな、いちいち回りくどいよ。」

ちょっと言いすぎたかな、と悩んでいると電話の向こうから笑い声が聞こえた。
その後、彼女は皆に会いたいかと僕に問いかけた。
僕は迷わず即答で答えた。会いたくないはずがない、会いたい、皆に。

彼女は自信たっぷりにそれを引き受けて、僕にあの計画を確認してきた。分かってるよ。
と短めに答えるとまたクスクスと笑い声が聞こえた後あの回りくどい言葉が返ってきた。


「どうしてこんな事をしたんだ?」

ただの好奇心で聞いたのだが、気に入らなかったらしく何故か僕が非難される羽目となった。
暫くすると思い出したように彼女は軽やかな笑い声と共に返事が返ってきた。
ご機嫌斜めではなかったらしい。


「・・・。ありがとうとはいえないよ、でも楽しかった。」

対する僕はそんな感じで電話先の答えに少し複雑な気分で答えた。
電話越しでもそれが伝わったらしく雰囲気が気のせいか先程より真面目に感じられた。
そんな様子に僕は何も言えなくなった。


「そんなことはしない。少なくとも、僕はしない。」

更に相手の意外な言葉に僕も思わずそう言った。
フォローのつもりもあるが本心からの言葉だった。
電話から聞こえていた声は止まった。
つられて僕も無言になると、また電話先の彼女が話し始めた。


「分からないけど、そう信じればいいんじゃないかな。」

僕の気休めは通用しなかった。彼女は一方的に言葉を叩きつけた。
電話でもその必死さが伝わる。


「巻きもどしても、なにもならないんだよ。学文路。」

僕は彼女の名を口にすると彼女は元に戻ったように口調を最初の頃に戻した。


「そうしといてくれると助かるよ。」

と僕は別れの言葉を口にして電話を切った。
次に電話する場所は電話帳を開くまでもなく電話をかける。


「からくり人形は星を描く。九尾狐に会いし者、我が紙の前にRe;Startし世界を繋げ。」

 

 

−幻の055と56。別の解釈−

 

 

エピローグというか後日談にあたる話なのだが、様々なごたごたを乗り越えて僕は改めてこちらの世界に戻ってきた。
本日休業と書かれた札をぬけて僕は暁の喫茶店にいる。

ぶっちゃけ貸しきり状態だ。
若干罪悪感もあるが、きっと聞かれたくない話があるのだろう。
う〜ん、心当たりがあって否定するのが難しいぐらいだ。
さてどれから聞かれるんだろうっと思ってると僕の前にコーヒーを置きながら暁は向かい合わせに座った。
表情はいつも通り変わらない芝居がかった笑顔だった。
口火をきったのは僕だった。


「まったく、土だらけになりそうな僕を見捨てるのは酷くないかな?」

「あはは、その件はすまなかったね。でも結果的に平気だったんだろう?そうそう、俺様暁様の質問コーナーでよろしいかい?りゃりゃりゃ、返事はもちろんYESだよね。
・・・・本当はどこまで知ってたの?いや、ここは的確に言おう。いつ知って、どこまで知っていたんだい?」

「同じ質問を返すよ、学文路 其。」

「君が羽衣石 斗じゃなくて死んだ兄である事。
                  おそらくそれは黒猫か蛇に絡まれた時に入れ替わった。」


伊達眼鏡が反射して瞳は見えず、口元の笑みは消えていた。
僕に合わせてそちらの口調を選んだのだろう。


「ご名答。今度は僕が答えるよ。全てだよ、僕も弟も全てを知っている。」

 

僕は記憶を辿りながら、そう言った。
元々は鷹に出会ったときに会った少女が僕と弟をつないでくれたのだが、そのおかげで僕らはお互いの記憶や心情をリンクさせることが出来た。
いわゆる完全な双子。


「まったく困ったものだ。確かに双子の入れ替わりは小説の十八番なのだろうけど。」

「そうは言っても火影と陰火だったら分かりそうだけどね。」


と僕が言うと暁は小さく声を立てて笑った。
言った後でなんだが、僕らさえも知らないうちに彼らも入れ替わってたのかもしれない。
なにせ相手はあの癖のあるいたずら好きの双子だ、なにが起きてもおかしくない。
まぁそんな事を言っても仕方ない。


「けれど、君たちはブレがなかった。双子というよりコピーに近い。
                                                    ・・・アレを使ったのかい?」


暁のセリフに僕は頷いた。
そうなのだ、僕ら、いや的確に言えば名前のない僕は奥の手を使った。
それは目の前の暁の妹が作ったシステムにして使用されたもの。
記憶の上書きと偽りの人生の移植。死んでしまった僕が生きる唯一の方法だった。

学文路 之が祖母の死で≪不確かなる二重奏≫に化けたように。
僕の場合はこちらの世界や彼女、彼女たちがつくった人形に会うまで発動しなかったが。
なにせ、たった3歳児が作り出したシステムだ。
タイムラグがでても仕方ないし、こうやって僕が生きている事だって奇跡なのだ。
ちなみに、完全に羽衣石 斗の兄としての記憶や学文路 之に助けられた記憶が戻ったのはあの終焉のベルを聞いた後だったが。
まぁ、そんな事を言っても無意味に等しい。

 

「・・・そうか。それじゃあ限りなく一人だ。あの双子よりも姉妹よりも的確に。」


かみ締めるように暁はそう言った。らしくない表情はどことなく悲しげに見えた。


「そうだね。そんでもって今頃、お前の願いがかなったりするんだ。」

「・・・えっ?何を、言っているんだい?」

「レマや弟によろしく言っといてよ。」

「待って!待った!何を言ってるんだい?確かに私はそれを望んでいた!
でも、違う。今は違うんだよ!生きろ!生きてくれ!そんな伝言は聞かない!絶対に聞かないから。自分で伝えろよ!」

 

 


動揺を隠せない暁を置いて僕はこの世界から消えた。

 

 

 


「・・・というのは、もちろん冗談だよ。」

自身で自身を騙す事に慣れてしまった僕はそんな汚い嘘までつけられるようになってしまった事に自虐的に笑う。これはやりすぎか、と弟がよくやるように自己嫌悪をしてみたが、一人の人間として意識をもってしまった今となっては意味がない。
僕は弟と違って甘くはないのだ。


「あ゛ぁ゛!!なに?なんの遊びかい?はかりん?君をどこぞの半目男の次に殺す人リストにあげるところだったよ?マジで俺様暁様の涙を利子付きで返せ!心臓止まるかと思ったじゃないか!!」

「大人気ないよ、暁。」

「りゃっほい!その声と顔でそんなことをいうのはよくないと思うんだな!大人で遊ぶなよ!!」

「そうそう、あの紙は学文路に言われた全員の名前と人形名が入ってるんだよ。」

激怒する暁に話をそらしてみるとへぇ〜っと間の抜けた声が聞こえた。
やっぱり、知らなかったんだ。


「そうなんだって、こんな事で誤魔化されてたまるか!俺様暁様って10回唱えても許してあげないよ!」

「ちなみに弟が絵本にする予定。ちょっと楽しそうだった。」

「楽しそうな、はかるんかぁ。良かった良かった。っておい!りゃりゃりゃ・・・もういいや。」


暁は僕を叱るのを諦めたらしく自身のコーヒーを飲んだ。
忙しい人だ。表情や口調もそうだが、裏で色々考えて動いて騙して。
烈火の言った斗に話しかけるときの嘘はそういうことなのだろう。
本音を暴露すると、どうでもいい。
どうせ僕らだって嘘をついてた訳だし。
あぁ、一応言っとくと烈火の時は嘘をついたわけじゃない。
暁がいった推測は正解なのだ。

それは記憶が戻った今、確信できる。あの時に嘘はない。


「・・・それでも僕は斗に悪いから、ここを出とくよ。レマのとこにでもいる。」


暁は僕の宣言を無言で聞き流す。
暁の頭の中で僕と斗を比較し、区別しているのだろう。
入れ替わりができなくなったのは残念だが、弟と話すこともないので別にそれでいい。
そっちの方が弟も助かるだろう。


「なんだったら学文路に言って新しい@dollでも作るよ。」

学文路 之とは死んでから知り合ったが、浅からぬ仲だ。
それこそ携帯電話番号を交換するほどの。
暁は返事をしないが、僕は立ち上がってここを出ることにした。
・・・ここはもう僕の来る場所じゃない。


「それじゃあな。終わっていた話。」

「また来いよ。認識する者。」

 

後ろから暁の声が聞こえたが僕は振り返らない。

 

 

 

 


 

−からくり人形は星を描く。−

 

                              描かれた星は美しく輝いていた。

 

 



オリジナル小説 「からくり人形は星を描く」 54

携帯から読めません。
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54

 


再び目を覚ましたとき土だらけ、ではなかった。
そちらの方が全然良かったと今になって思う。

 

「・・・・そんな。」

 

妙な脱力感と焦燥感が同時に襲う。
あれは嘘ではなかった。そう思ってもなにが証明となるのだろう。
こんな事ならなにかもらってくるのだった。
とくだらない事を思いながら僕は周りを見渡した。

 

そこは馬に乗ろうとして格闘した人っ子一人いない静寂に包まれた路地裏であった。
時が止まったようにスロー再生で僕の荷物が宙に浮いている。
浮遊した後、時計が時を刻むのを思い出したように急速に落下し、街も音を取り戻した。
慌てて僕は自分の携帯をスライディングする形でどうにか落下を防いだ。
他の画材や紙が崩れ落ちたドミノのような音を一斉に立てながら地面に叩きつけられていた。

 

「はぁ・・・。」

今までの疲れと携帯が無事な事に安堵した、ため息が自然と口からこぼれた。
肩を先ほどので無茶をやったせいか変な方向にひねって軽く痛かったが、普通に立ち上がることに成功した。
服のほこりを手で払い、落ちたものを拾い上げていく。
徐々に冷静さを取り戻し始めた頭が警告のサイレンを鳴らした。

 

「戻ってきた、ってことかな。」


確認のしようがまったくなく、否、確認する術も何もない。

・・・いや、的確にはあるのだ。
携帯を開いた。
いつも通り買ったときのままのチェス盤の待ちうけ。


壊れていない、か。
神隠しにあったケースとは明らかに違うわけだ。
だとしたら、成功だ。裏返しの自分にも納得させるための言葉を呪文の様に唱えた。


試しに一本、電話をかけてみた。
現状の確認とこれからについての話。
普通であれば、異界に行ってきたなどと話せば、妄想の類と笑われるであろう。
けれど、そいつは違った。
彼女は神隠しをした張本人にして物語最大の幕だ。…などと言っても僕の話とは別な軸で紡がれている物語だ。ここで語ることはない。

 

電話を終えて、今までの事をそっと思い出す。
初めて空羽に会った事、双子のいたずらや自身の不思議な話、
時雨の恋心、烈火の過去、・・・包帯、そして、暁。

 

再び、ゆっくりと目を開けると目の前に小さなデッサン人形がいた。
それは青年が星を降らせたように、二人の少年が世界を映し出し書き出したように、少女が音に祈りをささげたように、女性が斬りつけ否定したように、木製の30cm程度の人形が存在していた。
誰の物なんて愚問であろう。

僕は膝丈ほどのデッサン人形に話しかけることにした。
無論、デッサン人形は喋らない。
しかし、動きはあり、かたかとこちらへ歩いてきてくれた。

なんだろう・・・すごく、かわいい。
一般人であれば持てないような感想であるとは分かっていながらも、
僕にとってはペットショップの小動物を見ている気分だ。なんとも愛らしい。


僕は、あの世界の話とそして自分が作った噂を人形に聞かせた。
人形は一度頷いたのち、消えてしまった。

 

 


さぁてと。僕がやるべきことは、これが最後だ。

 

 

 

 

「からくり人形は星を描く。九尾狐に会いし者、我が紙の前にRe;Startし世界を繋げ。」

 

 

 

 

 

 

 


 


 

−終わりと始まりの電話は馬を呼ぶ口笛。

                              少年に描かれた星は美しく光るであろう。-

 

 

 

 

 


                            −END−



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 53

携帯から読まないでください。


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53

今回の仕事である“亡霊の声を道標に子供が消え行く”は、実際にあのあたり一体に音が流れていたらしい。
それはいわゆるモスキート音と呼ばれる周波数が高く若者しか聞こえない音だったらしい。僕と一つ下の烈火はあのように特殊な耳の持ち主だったからすぐさま聞こえ、不快感を表したように頭を抑えた。


ちなみに、聞こえる年代は双子と同じ10歳前後だと烈火は言っていた。
本当に音が流れていたから、噂が真実である可能性もあったので、その後の処理は暁がなんとかするらしい。
しかし、仮定としては猫が動いていて子供に見えたとか迷う中で森の中で誰か居るように見えた、など考え出したらきりがない。
あと、昼間になって実際にその場所にいった時雨はラジカセを発見したと言っていた。
それは念入りに壊してもらったが何にしても悪質ないたずらだ。
ちなみに、物の怪に関しては今回は噂の真偽が分からないのに猫をいじめる事は出来ないと猫愛好家二名(烈火と空羽)により却下となった。
今回の事件についての説明はそんなところらしく、ぶっちゃけた話をすると僕が寝ている間に色々とすんでいた。
置いてかれた気もしなくもないが、後始末をしてくれたのだから感謝すべきところなのだろう。ちなみに今は食事もすませてお昼寝には最適な午後2時で隣にいる暁と男二人で外に出ている。空羽の時や双子のときには気がつかなかったけど、もしかすると変な情景なのかもしれない。
しかし、これも仕事のうちだ。居候の僕がどうこう言える問題じゃない。
何処に向かっているかというと僕も一切不明。暁が着いたよっと楽しそうな声で言った。
改めて場所を見渡すと、そこはなんともミステリアスな雰囲気だった。というか肝試しだ。


「墓場・・・?」

「そうだよ、はかるん!そういえば双子の時にびびったらしいね!ふふ、怖いかい?怖いかい?ちなみに今回は“呪われし墓に行くと足をなくした幽霊が足をとりにいく。”っていうものさ!怖いかい?怖い??もし怖くても悲鳴はあげちゃ駄目だよ!そんな事でもされたら矢の様に烈火と時雨が俺様暁様を殺しに来るからさ!ってこんな場所で縁起でもないね。埋葬の手間が省けるとかおもっちゃ駄目だよ!」


そう言いながら暁は僕の手を強引に引いて数あるお墓をくぐりぬけて一番新しいであろう墓の前で止まる。

まったく双子は口が軽い。とは言ってもこの程度で怖がる僕ではない。
大人しく墓の前でじっとする。気のせいか温度も低く湿っている。
昨日とはまた違った陰湿さがある。


「あぁ、ちなみに今回はもう解けてるんだ。噂屋なめんな。みたいな?みたいな?りゃりゃ、かっけぇ事言っちゃったかい?お?はかるん、その様子はもう蛇に絡まれている感じだね。でも、残念答えはそれじゃないんだぁ!答えは土だよ、この墓の前だけ地盤がゆるくてネェ。ほらゆるゆるやわらかい〜。、」


暁はそう言いながらわざとらしく笑う。、
まさかのスピード解決だ。というかこんなに早く終わって言いのだろうかと疑問を浮かべたが、それどころじゃなかった。

完全に足をもってかれている。
もちろん幽霊のせいとかそんな非科学的な話ではない。
暁の言うとおり僕の片足には生ぬるい蛇の感触が絡まり地盤がゆるいせいで抜け出せないのである。自由な片足を動かそうとしても土が重たくて動かない。
靴の間に土が入りなんとも気持ち悪い。服の上からでも土の感じがあって僕は思わず鳥肌が立つ。
暁の方をみるといつになく僕のほうを見下している。いや、違うこれは・・・・!
僕が状況を理解し悲鳴をあげようとした時には既に遅かった。そう、遅すぎたのだ。


「はかるん、じゃあね。」


にこやかに笑う男を見ながら僕だけが地面に引っ張られていった。
何故、僕だけがという疑問はすぐさま浮かんだが回答が出る前に僕は土まみれとなっていた。

 



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 51

 携帯からは読めません。
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51
 
僕は烈火から距離をとり起き上がろうとしたが、完全に起き上がれずに耳元にメガフォンを当てられたまま最初と同じように向かい合わせとなった。
泣きはらした目元は真っ赤になりながらもしっかりとした意思で烈火は僕を見る。
咎めて訴えるような目線だった。
僕は、耳が聞こえなくなった世界を考えた。
不自由するんだろうな。
もう皆の声が聞こえなくなるんだろうな。双子や暁、空羽や時雨、クラスメート、家族、夢の世界の声、そして七色にかわる少女の声も。でも、これが当然の仕打ちだ。

 

「嘘だね、救いようのない嘘だ。」


それは飾り気のない烈火の声だった。
か細いけど断言するような声だ。僕は首をふる。


「違うよ、烈火。」

「うんん、斗ちゃんは嘘をついてるんだ−ぁ。
                                烈火ちゃんは分かるの。/・・・分かってしまう。」

そんなことはないっと反論しようと思ったが別の考えがよぎる。
この反論は果たして本心なのだろうか、それとも自己を守る為の言葉なのだろうか。
嘘を認めてしまってはいけないと思っているから?心から愛しているから?
今さっき好きだとか愛してるとか想ったのはただの偽善なんじゃないか。
悩む僕に烈火は追い込むように言葉の毒針を差し込んだ。


「嘘だよ−ぉ。耳がなくなってたときから、声が震えてるもん。
                                               音が全部、ぜんぶ・・・偽りだった。」


悲しそうにつらそうに泣き出しそうに烈火はそういった。
抱きしめるようにもう一方の手が僕の首に伸ばされてる。
ただし、赤い刃を持って。冷たい感触が首筋につく。
こんな事がしたかったわけじゃないのにどうしてこんな事になってしまったんだろう。僕は一人でに考えるが答えは出そうになかった。


「この耳には聞こえてしまう。
           心の声が。心拍数、血流音、声の震え、偽りの音。・・・全て聞き分けるの。」


非常識な話だった。
それでも目の前で泣きそうになっている少女は嘘などついてないだろう。
僕にだって分かる、これは嘘のない声。
こんな風に烈火の声に耳を傾けたのは初めてかもしれない。
こんなにもこの少女の声は頼りなく弱々しいものであったのだろうか。
今まで気がつきもしなかった烈火の世界をみた。


「烈火、嘘じゃない。違うよ。」

「信じない。信じられない。ねぇ斗ちゃん、知ってる?みんな嘘つきなんだよ?暁も空羽も双子も時雨も!皆みんな嘘つきなの。信じている振りして全部嘘なの!斗ちゃんに話しかけてるときだってみんなみんな」

「烈火、・・・・・・嘘じゃない。」

「知らないだけだよ!聞かないだけ!分かってないだけ!嘘の裏側を!音にあふれたノイズの世界を!・・・つらい、つらいよ。嘘の言葉を聴き続けるのは・・・ッ!だから耳を喰った。文句あるのッ!?」


感情的になった烈火が僕の首に淡く刃を突き刺す。
痛いというならこの傷より目の前の烈火の方がよっぽど痛かった。
見てられなかった。けれど目を背けてはいけなかった。
緊張感のある状態で自然と心拍数があがっていく。
この音もきっと彼女を苦しめていると思うとつらくて仕方なかった。
止める為に死ぬなんてことは出来ないけど、それでもこの時だけは全ての音が消えてしまってほしかった。


「烈火、ごめん・・・。愛しているって本心かどうか、まだ怪しい。
                                               だからって嘘をついたわけでもない。」

思っていることをすべて話そう。
この心臓音にも負けないように全ての音の中で僕の声が一番届くように。


「でも傷つけたのは悪かった。
                最初の耳に気がついたときは静かにしてた方が烈火のためだと思って。」

「・・・ありがとう。ごめんね。/ さようなら。」


烈火の最後の声で僕は急速に意識を失った。
気のせいか分からないが最後、視界の片隅に黒猫をみた。

 



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 50

注意書きまだです。2/21日
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50 




烈火の流した静かな涙が頬にゆるく伝う。
涙は止まらない、ぼろぼろと僕と烈火の間を縫うように流れ続けた。
それは僕の涙だったのかもしれない。そんなことは分からない。
血も含んだ涙は重くぬるく落ちてゆく。

鉄分を含んだ血の匂いと烈火の髪に染み込んだ柔らかいシャンプーの香り、そして湿った木々特有の香りが僕を包む。
烈火の力が抜けるのが分かった、ようやく刃物とメガフォンを放したらしく刃物の軽やかな金属音とメガフォンの落ちた音がした。

もういいだろう、というかやりすぎだ。
最終手段でもなんでもない、こんなの外道だ。
そんな罪悪感が自分を責め立てる。
泣いている烈火になんてことをしているんだ。
これを含めて泣いているのかもしれない。
だとしたら、僕は・・・。僕は最悪だ、最低で醜く汚い。

好きとか愛しているとか、こんな事をするために存在しているわけじゃない。
それに今さっき僕は烈火に嫌われたばっかりじゃないか。
なのに、なんでこんなことをしているんだろう。
自分が正しいとか思ってるわけじゃない、これが最善だとか認めたわけじゃない。

烈火を殴って止める事だってできたし、さっさと逃げたり、それこそ烈火の言うとおり大人しくしてれば良かったのかもしれない。
選択肢はたくさんあった、なのに、どうして僕は一番好きな子を傷つける事をしてしまったんだろう。
唇を離しても涙は滝の様に僕の頬を伝う。烈火の目も顔も耳も唇も見るのが怖くて悲しく仕方なく、僕は覆いかぶさるように烈火の肩に頭を乗せた。
甘ったるいシャンプーの香りが僕の顔いっぱいに触れる。

最悪だ。何もいえないあまりか逃げてしまう。
なんて声をかけたら一番嫌われないかなんて考えている自分に吐き気がでる。
この期に及んで取り繕って縁をつなごうなんて、ご都合主義にも程がある。
そんな自分でも烈火は赦してくれるんじゃないかなんて、そんな夢話を信じたりもしている。
いつからこんな計算高く汚くなってしまったのだろう。
いつからこんなに一人の少女に嫌われる事が怖くなったのだろう。

先程の烈火の如き怒りに満ちた悪魔の声が消えない。
あれは烈火の声で僕に話しかけられていた。
だって、そうだろう。あの場には僕しか居なかったんだから。
他の誰に死ねだの嫌いだの滅びろだの言っていたというんだ。
その言葉すらも僕は受け取らず逃げて、こんな事までして泣かして、泣いて。
馬鹿だ、救いようのない馬鹿で浅はかで底辺も突き抜けだよ。
分かっているのに、烈火から離れられないで救いを待ってたりするなんて、最低だ。

なにか言わなきゃ、謝らなきゃ、ここから離れなきゃ。
そう思うのに口は体は何も反応を示さない。
心臓だけが針が刺さったように痙攣し痛い。
じんわりと切れた傷口が開き始めて、彼女の香りをかき消すように血の香りが充満する。

烈火はなにも言わなかった。
あのいつもの語尾を延ばす甘ったるいシナモンのような声も低く重たい声も先程の怒り狂ったこの世のモノとは思えない声も、彼女の淡い赤色の口からは発せられなかった。

それがまた痛かった。
烈火がまた否定して僕の心を打ち砕いてくれたのなら割り切れたのに。
いや、諦めないのかもしれない。
自分はこんなに劣悪な人間だ、いくら言われてもこの愛情を捨てられないのかもしれない。
分からない、でも、もう、なにもない。何もできないし、しちゃいけない。
もう何も願っちゃいけない。
怒りも悲しみも楽しさも空虚さも暖かさも冷たさも欲望も愛情も、想っちゃいけない。
そんな気がした。

熱を帯びた僕らの体が急速に冷え込んでいく。
寒さの中で繋がっている場所だけ、ただ艶めかしく暖かい。とんだ、皮肉だ。

自分が嫌いになりすぎて死んでしまいたい。今ならなにもかも投げだすことが出来るような気がする反面、結局何にもできないのだと平常心の自分がいう。
無意味で無駄で無効に満ちた戯言が僕の頭を支配して離れない。
その一言が禁句だと知りながら僕は紡ぐ。





「烈火・・・ごめんね、愛しているよ。」



自分の声だと思えないほど冷たく無機物のような音だった。



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 49

夕より注意書き

「今回は病んでいる表現と痛々しい話なので読む際にはお気をつけください。
あと、いつも通り携帯から読めません。
それではいってらっしゃいませ、お嬢様、ご主人様。」


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49

 

烈火の発言に僕は何も言えなくなった。
そう、そうなのだ。僕は風が吹いて初めて烈火の片耳が存在しないことを知った。
初めて会ったときに見たのは今見ているのと逆側、つまり右耳だった。
ニット帽をかぶってることが多かったし、長い髪だったので湯上りでなければ見る機会がないだろう。烈火の左耳があるべき場所は真っ白なガーゼで真四角に塞がれ、その上から虹色の蝶柄のシールが貼ってあった。
烈火の口元にあった笑顔はもうない。
真っ直ぐ射ぬくような少女の両目が僕を見る。僕は逃げられない。逃げない。


「・・・そうだよ。」

僕の肯定に烈火は口元を緩めて再度笑った。
いつもの笑顔とは違う歪んだ悲しい笑みだった。
持っていたニット帽と耳あてを迷いもなく手を離す。
拾うべきかどうかなどと呑気な事を思っている場合じゃなった。


「ねぇ、斗ちゃん。お揃いにしようよ−ぉ!
                               きっと似合うってよぉ。ふふ、可愛いって−ぇ、絶対。」

捻じ曲がった笑みだった異常な発言だった。
僕の目の前にいるのは本当に烈火なのだろうか、そんな疑問さえ思い浮かぶほど、異常だった。
少女は短いスカートから刃物を取り出した。刃物を覆うようについてた皮で出来たカバーを地面に投げ捨てると、鋭利な刃物は暗闇の中で銀色に光り輝く。


「えへへ。ねぇ、斗ちゃんさ−ぁ、怖い?ねぇ、怖い?」

刃物を見てご機嫌そうに微笑む少女。僕は返事を返さず首を横に一度だけしっかりと振る。烈火はそんな僕を猫の様に目を細めてかすかに睨む。先の尖った刃物が僕のほうに向く。
怯まず、僕は動かない。


「怖くないの−ぉ?つまらないな−ぁ。信じてないの−ぉ?
                                                    ほら、えへへ、本物だよ−ぉ。」

そう言って、烈火は笑いながら自身の腕を軽く切った。血はすぐには出ず、傷口が開いたように緩やかにどろどろと烈火のカーディガンの間からなだれ出た。
烈火の服が紅色に染まっていく。鮮血の剣は鉄の匂いを纏いながら僕のほうに向く。
懐中電灯に当てられた烈火と刃物は妙な影をかたどって僕に迫った。

「つまんない、驚かないの−ぉ?分かったぁ!
                                  じゃ−あさぁ、耳破壊してあげるよ−ぉ。えへへ。」

烈火は光を浴びながら艶やかに強かに怪しく笑った。
それは血の気も凍るほど美しかったし、吐き気がするほどおぞましかった。
なんにしても
16歳の少女がする顔ではなかった。
烈火は冗談ではもちろんないのだろう、それは先程の怪我で分かった。
だとしたら、本当にこれはまずい。
このネジの緩んだ少女を止めなければ!僕はすぐさま先手をうつべく行動に移る。
悩んでいる暇も、躊躇している余裕もない!

懐中電灯を思いっきり烈火の目に当てて、僕は急いで目を瞑った烈火を押し倒す。
烈火の体は簡単に地面に着いた、両手を急いで塞ごうと手首を固定するが、うまくいかずに
僕の頬に刃物が当たる。


/ 放せ!触るな!殺してやる!殺してやる!
                                  お前なんか、お前なんか響き殺してやる!!!!!」

烈火が獣の様に暴れるたびに刃物が動き僕や彼女自身を傷つける。刃物はまだいい方だ。
メガフォンを使われたら敵わない。
烈火は目元に透明な雫を流し続けながら悲鳴のような呪いの言葉を紡いだ。


なにも知らないくせにっ!大人しく死んじゃえばいいのに!殺されろよ!
なにも考えず、私に従えよ!お前なんか大嫌いだ!勝手に考えて堕ちてんじゃねぇーよ!
死ねよ!終われよ!なんなの?私がなんかしたわけ?なんで勝手にそんな事想うわけ!
死ねばいいのに、滅びろよ!きらい、きらい、だいっきらい。全部いやだ。・・・・放せよ。殺してやっから、放せよ。雷鳴の如く轟かせて殺してやっから、放せッ!」

初めて聞く醜く悲惨でみっともなく聞くに堪えない烈火の声だった。
それらを無視して僕は話しだす。


「愛し愛されたいのならば、武器を捨ててキスをせよ。」

光の届かない世界を静寂が包み込んだ。



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」48

注意書きまだです。2/21日
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48
 

目的地に着いたのか、烈火は足を止めた。
それに習って僕も止まって、周りを懐中電灯と共に見渡す。
なだらかな丘であった。森に続いているのか
5メートル先には木々が怪しく生い茂っている。気のせいか、先程よりも湿気が多く服の上からしっとりと冷たい空気が触れる。
もう少し先に行ってみようと思い歩くのを再開しようとしたが、それはできなかった。
進みかけた僕の後ろにいる烈火は僕の手を強く握って微動だにしない。
気になって後ろを振り向いた、真っ黒な世界でぼんやりと烈火の白い肌が浮かび上がる。
顔色は悪く、僕の手を離して耳あての上から更に両手で頭を抱えるように耳を塞いだ。
明らかにおかしい。


「大丈夫か、烈火。どうしたの?」

僕の声に、反応した烈火は僕の顔を苦い表情で見た。
今にも悲鳴を上げそうな顔でメガフォンっと小声で呟いて、片手を僕のほうに向けた。
僕は急いで放り出されたメガフォンを烈火の片手にのせた。
烈火は受け取るや否や、大きく口を開けて叫んだ、のだろう。
実際には何も声は聞こえず、烈火がメガフォンを片手に大きく口を開けているだけだった。

何がおきているのか僕にはさっぱりだった。
でも耳を押さえていたということと先程のメガフォンで叫んだのは、恐らく繋がっていたのだろう。
音、たぶん、それが烈火に何らかの影響を及ぼしていたのだろう。
烈火は確認するように、耳あてとニット帽を外して周りを見渡す。
僕は烈火に懐中電灯を渡すべきか、少し考えて烈火を呼ぼうとした。
そんな僕らの間に夜の冷たく寒い風がすり抜ける。

たまさかだったのだろう。
烈火が振り返ったのもニット帽を取ったのも僕が烈火を懐中電灯で照らしてしていたのも。
すべて偶然で、その偶然の中で僕は新たな事実を知ってしまったのだ。

冷たい風に吹かれながら、僕はなんて言うべきか言葉を失った。
頭が一瞬真っ白になった。こんなことがあっていいのだろうか。
様々な疑念や困惑に一気に襲われた。
自我を見失いかけたところを必死に平常心が支えようとする。
真っ白になった頭がすぐさま軌道修正しようとフル回転する。
これを知ったところでなんだと言うんだ。普通にしよう、何もなく今までどおりに。
そう思う反面、手には嫌にべたつく緊張した時に流れるあの妙な汗が流れた。
目の奥も気のせいか痛い。
顔も引きつっているんじゃないかと心配になる。
冷ややかな風のせいでいっそう気温も心までも寒くなった気がする。
そんな僕の前に烈火が無邪気で、でもどこか意地悪めいた猫のような笑いでこちらを見る。


「なんか、呼んだ−ぁ?斗ちゃん。それと、さっきは取り乱して
/ ・・・・ごめんね。」

取り乱しているかどうか気にしているのは僕のほうだ。
先程までなら、烈火の行動の理由を尋ねていたところだがそれどころではない。
僕は声が裏返らないように細心の注意を払いながら口を開く。
嘘は苦手だけど、でも仕方ない。
この場はそうしているのが正しいのだ、と自分に言い聞かせる。


「・・・驚いたけど、大丈夫だよ。」

大丈夫だ。声は普通、いつも通りだった。妙に震えたりつっかえたりしなかった。
心の中で安堵した。


「へへ、良かった−ぁ。あと、烈火ちゃんもうこの事件解けちゃったんだ−ぁ。」

「へぇ、それはすごいな。」

「でしょでしょ−ぉ。でもマジで今回は危険だから一回戻ろうねっ。
                                           あと−ぉ、さっきから斗ちゃん変だよぉ。」

思いのほか早い段階で疑われた。
ばれた事に内心安堵すると共に窮地に追い込まれた気分になった。
そんな僕に烈火は猫科の笑みをしながら甘い声で止めを刺した。



「なに−ぃ?烈火ちゃんの片耳が−ぁ
/・・・・・・・なかったとか?」


心臓が止まるかと思った。



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 47

@doll旅路の館(冷、光、樹、宵)より注意書き

「ちゃお、ちゃお♪光があるほうの光なのら〜♪酸欠っ!」
「ツッコミレベルが高すぎるよ。どっから突っ込めばいいのやら。」
「あっ・・・冷、大丈夫・・・?その、・・・なにか手伝うことあるっ?」
「あら樹ちゃんは宵姉さんを手伝うって言ってなかったっけ?テレパシーで、89%ほどぉ〜。」
「夢と現実の区別ぐらいしてください。それと樹さんの人権を無視した遊びはやめてください。」
「なになに、遊びだと!?おいらも絶賛参加するのら〜。どんとこい!」
「・・・あの、その、光・・・自分で絶賛は、その、違うきゅうっ。」
「樹ちゃん相変わらずで宵姉さんは43%ぐらい安心したわよ。相変わらずのロリ体型ショタ顔!」
「半分もいってないんですね。しかも、先程の発言じゃなくて容姿の問題ですか。」
「養子!?冷、早まるのじゃないのら!確かに、ほにゃららだと難しいけど、でもその年で!??」
「誰との子だよ。何の話だよ!光、落ち着いて。姿形って意味の容姿だからね。」
「ベビー服なら宵姉さんに任せてよぉ。0.5%程の安心安全と99%の趣味趣向でやってやんよ!」
「冷、良かったね。」
「珍しく三点リーダーを使ってないところ悪いですが、どこもよくないです樹さん。どうしてこうなった。」
「冷が再起動腐能になったので、おいらがしめてあげるんのら!携帯から読まないように。」
「ふふ、腐能になってるのは100%宵姉さんの脳内だけどね。」


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47 


時刻は8時、僕と烈火はようやく外に出れた。

ようやく、というのは暁に本日二度目になる長い話につき合わされたからだ。
玄関先で言われた話を要約すると、夜で外が暗くて寒いので風邪を引かないように、何かあったら真っ先に帰ってくること、今回の噂が本当であったら直ちに帰ってくることなど。
個人的には最後の注意が妙に引っ掛かったが、烈火の様子から見ればたいした事じゃなさそうに話を早く切り上げてほしいっといった雰囲気だった。
今回に関しては何かあるのだろうか、しかしあったとしたらなんで僕と烈火に行かせるんだろう。っと頭の中に疑念が浮かんだが、昼間の暁の烈火の家具についてのくだりがあったし、暁の気紛れなのかもしれない。

思考を一時停止して、周りを見渡す。
外は薄暗く僕の右手に握ってある懐中電灯の光が頼りなく光っている。
左手は、というか左腕から手にかけては烈火に束縛、いや、可愛く言えば握られていた。
しかし、言い換えたところで事実は変わらず何度か振り払ってみようかと思ったが手錠をかけられたように微妙にしか動かない。完全にロックされてしまってる。
まぁ、女の子の手を振り解こうなんて考える方が贅沢なのかな。と思う反面、自分の弱いところを認めてしまってるようで軽く自己嫌悪になる。
別に烈火が嫌いと言う事ではないけど、真っ暗な状況を利用してるようだし、なにより流されているような気になるんだよな。
なんというか雰囲気で、という罪悪感。
出会ったころのことを思い出せば大分大人しい方だとは承知してる。
空羽からの頭突きや時雨のドライアイスの後だからかもしれないが、なんだか普通のイベント過ぎて受け入れづらい、みたいな。
どんだけ非日常に慣れてしまったんだ、僕。


隣で僕に寄り添うように歩いてる烈火は寒いのか、いつものニット帽の上に謎のキャラクター耳あてをしていた。マフラーとふわふわのカーディガンを着用しているのに、スカートは極端に短く、足元はブーツ。頼むから踏まないでほしいっと今から祈ってみたりする。

「斗ちゃん、どうしたの−ぉ?夜だから−ぁ / ・・・・・・欲情したのか。」

「違うよ。ズボン履かないのかなって。寒いでしょ?」

烈火は何故か不機嫌そうに頬を膨らませて僕のほうを見上げた。
いや、睨んだのかな、これ。

「ちぇ−ッ。つまんない−ぃ。それともなに?スカート、嫌いなの−ぉ?」

「別にどっちでもないけど。でも、寒いでしょ?」

烈火はぐいぐいとこちらに顔を近づけて、反論をすべく口を開いた。というか、顔がものすごく近い。烈火を突き飛ばして離れようかとも考えたけど、流石にそれは憚れた。
しかし、烈火の空いてる手のほうに持ってるメガフォンが当たって実を言うと痛い。
メガフォンがクッションで出来てればいいのになぁ。

「寒いけど、寒くないのっ!
          烈火ちゃんは斗ちゃんのためにスカートはいてるんだよ!
/・・・分かれ!!」

なんだか理不尽に怒られている気がする。暁といい今日は説教をくらう日なのかなぁ。

「はぁ、悪いけど分かんないよ。烈火が風邪ひいたら、みんな困るだろ?だから、ね。」


烈火は唇をかみ締めて苦い表情になった。
体を最初の位置に戻し、前を向いて歩く。
・・・言いすぎたかな。後悔にすぐに襲われたが、謝罪すべきなのか迷う。
僕の中での正論なのは確かだ、でも気分を害してしまったのなら、謝るべきだろうか。
小さな沈黙が痛いほど心をえぐる。口火をきったのは烈火だった。


「・・・手さ−ぁ・・・つなぐの、その、嫌だったりする?」

今更の質問だった。
烈火の表情は分からないが腕まで絡まれてた左手はいつの間にか解かれていた。


「・・・嫌じゃないよ。」

答えはもうすでに決まっているように、僕は烈火の手をとって歩いた。



オリジナル小説「からくり人形は星を描く」 46

@doll悠久の館(葉月、不燃、冰点、レコル)のより注意書き

「くかーっ!しゅきしゅき葉月きゅんのご登場なんだぜ、うぃ!」
「Notトークっしょ。うっさい。」
「葉月も冰点も喧嘩するなら他所でやってね。」
「くかっ!?別に葉月きゅんがぐるぐると喧嘩してるわけじゃないんだぜ!そんなバナナ!」
「バナナはおやつに入りません。そんな馬鹿か!って。・・・ここは保育所か、ジャングルか。」
「Notツッコミっしょ。うっさい。」
「もはや英語じゃねぇーよ。似非外人だよ。喋れないなら諦めろって、痛ッ!蹴るな。痛てぇー。」
「くかっ!葉月きゅんズラズラずたずた暴れるんだぜ!暴れん坊将軍なんだぜ!Let's Party!!」
「著作権ギリギリのねたはやめましょうね、葉月。あと携帯から読まないように。
「くかっ!もうしゃきしゃき締めなのかっ!?てけてけ早いんだぜ!待つんだぜ!」
「Notロングっしょ。たるい、帰る。」
「ちょっと待て、謝ってから戻れ。悪いと思ったら謝れって習っただろう?首ふり人形なんて見てみろ、あいつら誰も居ないのに律儀に謝ってるんだぜ。耳栓すんな。聞かざる状態になるな、冰点!」
「くかっ!ちょっと、ぐるぐる待つんだぜ!葉月きゅんが怖いからって逃げるんじゃないんだぜ!」
「そんな感じで、携帯から読まないように、お願いしますね。」

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46

 

その後の話をすると暁に報告すべく、僕と時雨は部屋を出た。
もちろん、粗方の片付けはしておいた。
刃物を刺しただけあって、床に傷跡が何個が見つかった。
どうするんだろうか。
まるで他人の大切な宝物を壊してしまった気分で僕は時雨を見た。

時雨はそんな僕とは対照的に何食わぬ顔でそこら辺にあった紙を適当に広げて隠した。
他にもドライアイスの溶けた後で木目が変色した箇所があったが気にした様子もなく同じようにする。
まぁ、無事にばれずに済んだかと言うとやっぱり違った。
ちなみにちゃんと時雨と僕は申告したが、やはり暁の説教の嵐は避けられなかった。
大音量でひたすら
2時間近く話し続けた。
人はあんなに話し続けるのかと思えるぐらい、話は永遠に近いぐらい続いた。
学校の先生だってあんな長々と話すことは出来ただろうか、いやできるはずがない。
一・二度脱線して、烈火の家具による出費、空羽の寝場所など僕と時雨に関係のない話にもなった。最後、まとめるように暁はこういった。


「とにかく、なにがあっても絶対に絶対に!ドライアイスは使わないこと!木造なんだから考慮して注意してくれよっ!それに壁にカビが生えたら大変だしね!他にもたくさん迷惑する、それはさっき話したよね?OKかい?理解したかい?承諾する?するよね!もう決定事項だからねっ!決まり!」

僕は首を大きく振って頷く。時雨は何故か嬉しそうに肯定するわけでもなく笑っていた。暁の説教が始まってから、ずっと気になってたのだが、なんで嬉しそうなんだろう。暁と話してるからかな。それとも、マゾとか。う〜ん、後者でないことを願おう。と思うと同時にまったく別の疑問が頭をよぎった。


 

「そういえば、此処にいて平気なのか?暁、仕事は?」

夕方に2時間もマスター不在でいいのだろうか。
もう客が来ないとしても店を閉めるには早すぎるだろう。

「りゃりゃりゃ。それは烈火に頼んでおいたよ。そうは言ってもなかなか大変だったんだよっ!なんでもロココ調の椅子がほしいとかなんとかで。まったく、椅子なんか並べてなにするつもりかい!?お茶会でも開くのかね。困った困った。なんにせよ、今日一日働いてもらう予定だから、はかるんもよろしくネ!」


「よろしくって、店の仕事を、か?」

暁は首を横に振った。
ちなみに時雨は自分がないがしろにされていて、
気に喰わないのかちょっと不機嫌そうだった。
暁はそんな時雨を横目で見、やれやれとわざとらしくジェスチャーをした後、答えた。

「違うよ、違う。不正解だね。噂の方だよ!朝も昼もで悪いね、はかるん。流石にずっと烈火に店を任せたらマスターの俺様暁様の品格が問われてしまうからね。りゃはは、そんな訳でよろしくサンキュー。」


朝の段階で烈火と仕事かと思ってた予想は今になってようやく当たった。
なんだか、山を登りきったと思ったらまだ頂上じゃなかったような気分だ。
う〜ん、頑張ろう。と独りでに気合を入れる。
隣にいる時雨は飽き始めたらしく飲み終わった湯飲みをくるくると回していた。
小学生がやるような行為だった。


「“亡霊の声を道標に子供が消えゆく。”場所と時刻は烈火に伝えておくから、聞いといてくれよぉ!」

そう言って足早に部屋を出て行った。
時雨は名残惜しそうに暁の背中を見た。
近頃この人のキャラがよく分からないでいる。
あれ?時雨ってクールなのかな、湯飲みをくるくる回しててもクールなのかな。などと、どうでもいいことを考えていた。
時雨は遊んでた湯飲みを片手に持って席を立った。


「今回は迷惑かけたな。それでは失礼する。」

そう言ってさっぱりな笑みを浮かべた。
最後にしゃららんと、あの安全ピンの音を響かせて、時雨は部屋をでた。


僕はぼんやりとそれを見送った後、何をするでもなく椅子によりいっそう寄りかかった。